「電気主任技術者になるにはどうしたらよい?」
「電験って実務経験じゃ取得できないの?」
とお悩みの方はいませんか?
事業用電気工作物の保安・監督に従事できる電気主任技術者には、電験の取得が必要です。電験一種~電験三種まであり、科目は理論・電力・機械・法規から構成されています。
また、試験合格以外にも実務経験による認定取得があります。工業系の学歴が必須となりますが、現場経験を既に積んでいる方であれば、認定による取得も可能です。
本記事では、電気主任技術者に必要な実務経験についてご紹介します。電験を認定取得する方法と実務経験の積み方について、ぜひご覧ください。
目次
電気主任技術者の実務経験による認定とは?必要な年数は1~5年
電気主任技術者は、学歴や資格によって実務経験の必要年数が異なります。第三種から第一種までの実務経験をまとめた表が次のとおりです。
学歴・資格 | 実務経験年数 | ||
---|---|---|---|
第三種電気主任技術者 | 第二種電気主任技術者 | 第一種電気主任技術者 | |
大学 | 1年以上 | 3年以上 | 5年以上 |
短大又は高専 | 2年以上 | 5年以上 | 認定取得不可 |
高校 | 3年以上 | 認定取得不可 | 認定取得不可 |
免状 | ー | 第三種電気主任技術者免状の取得後5年以上 | 第二種電気主任技術者免状の取得後5年以上 |
ここでは、電験一種から電験三種まで認定取得に必要な実務経験年数について学歴などの条件とあわせてご紹介します。
第一種電気主任技術者【電験一種】の実務経験年数
1.学校教育法(昭和22年法律第26号)による大学(短期大学を除く。以下同じ。)もじくはこれと同等以上の教育施設であって、通商産業大臣の認定を受けたものの電気工学に関する学科において、第7条第1項各号の科目を修めて卒業(大学院に関しては修了。以下同じ)した者
2.1に掲げる者以外の者であって、第二種電気主任技術者免状の交付を受けている者
上記が第一種電気主任技術者に必要な学歴です。
各番号に該当する第一種電気主任技術者(電験一種)の認定取得に必要な実務経験については、次の表をご覧ください。
No | 実務経験 |
---|---|
1 | 卒業前の経験年数の2分の1と卒業後の経験年数の和が5年以上 |
2 | 第二種電気主任技術者免状の交付を受けた後5年以上 |
第二種電気主任技術者【電験二種】の実務経験年数
1.学校教育法による大学もしくはこれと同等以上の教育施設であって、通商産業大臣の認定を受けたものの認定を受けたものの電気工学に関する学課において、第7条第1項各号の科目を修めて卒業した者
2.学校教育法による短期大学もしくは高等専門学校またはこれらと同等以上の教育施設であって、通商産業大臣の認定を受けたものの電気工学に関する学科において、第7条第1項各号の科目を修めて卒業した者
3.1および2に掲げる者以外の者であって、第三種電気主任技術者の免状の交付を受けている者
上記が第二種電気主任技術者に必要な学歴です。
各番号に該当する第ニ種電気主任技術者(電験二種)の認定取得に必要な実務経験については、次の表をご覧ください。
No | 実務経験 |
---|---|
1 | 卒業前の経験年数の2分の1と卒業後の経験年数の和が3年以上 |
2 | 卒業前の経験年数の2分の1と卒業後の経験年数の和が5年以上 |
3 | 第三種電気主任技術者免状の交付を受けた後5年以上 |
第三種電気主任技術者【電験三種】の実務経験年数
1.学校教育法による大学もしくはこれと同等以上の教育施設であって、通商産業大臣の認定を受けたものの電気工学に関する学科において、第7条第1項各号の科目を修めて卒業した者
2.学校教育法による短期大学もしくは高等専門学校またはこれらと同等以上の教育施設であって、通商産業大臣の認定を受けたものの電気工学に関する学科において、第7条第1項各号の科目を修めて卒業した者
3.学校教育法による高等学校又はこれと同等以上の教育施設であって、通商産業大臣の認定を受けたものの電気工学に関する学科において、第7条第1項各号の科目を修めて卒業した者
上記が第三種電気主任技術者に必要な学歴です。
各番号に該当する第三種電気主任技術者(電験三種)の認定取得に必要な実務経験については、次の表をご覧ください。
No | 実務経験 |
---|---|
1 | 卒業前の経験年数の2分の1と卒業後の経験年数の和が1年以上 |
2 | 卒業前の経験年数の2分の1と卒業後の経験年数の和が2年以上 |
3 | 卒業前の経験年数の2分の1と卒業後の経験年数の和が3年以上 |
電気主任技術者の認定取得に必要な学歴
電気主任技術者の認定取得の学歴については、工業高校の電気科(三種認定)、高等専門学校・専修学校(専門課程)、短期大学の電気工学科(二種認定)、また大学の工学部電気工学科(一種認定)などの認定校にて単位の取得が必要です。
単位の取得は、経済産業省が設置する認定校にて電気に関する知識の証明に繋がります。該当科目の単二については、次のとおりです。
- 電気・電子工学の基礎
- 電気基礎実験・電子実験
- 発電、変電、送電、配電、電気材料など
- 電気応用実験、デンキ実習
- 電気製図
- 電気・電子機器、自動制御、電気エネルギーの利用、情報伝送、処理等
- 電気・電子機器設計、製図
- 電気法規・電気施設管理
電気主任技術者の認定校は、全国各地に存在します。認定校について詳しく知りたい方は経済産業省の公式ページにてご確認ください。
電気主任技術者は実務経験なしでもなれる?電験の合格が必須
実務経験がなくても電気主任技術者として採用してくれる企業は存在します。ただし、電験三種以上の資格取得が必須です。
というのも、電気主任技術者をメインに雇っている企業では、電気の保安業務とあわせて電験三種に合格するための教育にも力を入れています。
電験三種は、教育に力を入れたとしても本番の緊張などが影響して、合格までに数年の期間を要することがあります。その場合にも現場経験は積めますが、一人前の技術者として従事できません。
一方で、実務経験を積むだけの電験三種資格保有者は、現場経験を積むだけなので企業からすると育成しやすい人材といえるわけです。
現在、第一線で活躍している電気主任技術者の誰もが初心者の見習い時代を経験してます。
そのため、電験三種の資格取得を考えている方は、「実務経験がないから」と悩みを抱えずに取得に臨んでください。
取得と並行もしくは取得後に電気設備の保安・管理業務に従事して現場経験を積むと企業から重宝される人材となれるでしょう。
電気主任技術者の実務経験の積み方は?積むには現場経験が必要
先ほど、電気主任技術者として従事するためには、現場での実務経験が大切だとお話ししました。しかし、電気主任技術者には実務経験として認定される業務と認定されない業務が存在します。
基本的に電気系統の現場経験であれば問題ありませんが、中には実務経験として認められないものもありますので、この章で十分にご確認ください。
電気主任技術者の実務経験として認定される業務
一般的に電気主任技術者の実務経験として認められる業務は、事業用電気工作物に関する業務です。
発電設備・変電設備・送配電設備・給電及び遠隔制御の設備や需要設備に関する業務の工事・維持・運用・監督指導が該当します。具体的には、次のとおりです。
No | 実務経験として認められる業務 | |
---|---|---|
1 | 500V以上の電気工作物(一般用電気工作物を除く)である発電設備(ダムや水路設備を除く)変遷設備、送配電設備、給電・遠隔制御等の設備(電力保安通信設備を除く)、需要設備に関する次の業務及びこれらの業務を監督指導する業務 | |
工事 | 新設、増設、改造、取り替え等の工事における電気設備、各種電気機械器具、付帯設備の設計(基礎工事を除く)、機器・材料の据え付け、組立て工事(土木工事、製造工場での材料加工・組立・調整を除く)、配線工事、機器調整及び性能検査 | |
維持 | 巡視点検、定期点検、修理、試験、測定などの設備の機能を維持するための保守管理業務 | |
運用 | 設備を安定的・経済的に運転するための業務、運転状態の監視、周波数及び電圧・電流の調整、電力需給の調整、系統の変更、事故の復旧等における運転・切り替え操作・給電指令・運用(事故の原因究明、報告等) | |
2 | 1の業務に直接関係し、現場に常駐又は定期的に出向く必要がある保安管理的業務・工事計画の認可申請書等の作成、電気事故防止対策業務等 |
引用:中部近畿産業保安監督部署「電気主任技術者免状の交付申請に必要な書類の作り方」
電気主任技術者の実務経験として認定されない業務
簡易的な設備の作業といった電気工作物に関する知識や技術をあまり必要としない業務は、電気主任技術者の実務経験として認められません。
受配電設備を含まない電気設備の維持・運用も同様です。具体的に認められない業務に関しては、次の表をご覧ください。
No | 実務経験 |
---|---|
1 | 単なる設備の設置・組立て作業などの電気工作物に関する知識、技能を必要としない業務(土木工事、組立工事、溶接工事等) |
2 | 警備のために行う監視、記録等であって、電気工作物に関する知識を必要としない業務 |
3 | 受変電設備を含まない需要設備、負荷設備のみの維持、運用業務 |
4 | 学校、研究所の実験設備、試験設備に係る業務 |
5 | エックス線発生装置、ネオン変圧器、テレビ受像器などの二次側にだけ高電圧を発生させる機械器具に関する業務 |
6 | 電気機械器具、計器類の製造に係る業務 |
7 | 電気鉄道用電気設備であって、電車線、トロリー線に係る業務 |
8 | 船舶(非自航船を除く)、車両、航空機名地の電気設備に係る業務 |
9 | 電気事業法が適用されない海外における業務 |
引用:中部近畿産業保安監督部署「電気主任技術者免状の交付申請に必要な書類の作り方」
電気主任技術者の実務経験による年代ごとのメリット
電気主任技術者は、電験三種以上の資格を取得し現場での実務経験を積むと転職で更に有利です。20代や30代、40代以上の方で得られるメリットはそれぞれ異なります。
ここでは、電気主任技術者の実務経験による年代ごとのメリットをご紹介します。
20代~30代|現場の即戦力として従事可能
20代や30代の方であれば、未経験であっても採用する企業は多く存在します。電験三種の資格保有者が少ないため、技術者として育成しようと考えている企業が多いためです。
また、電験三種の資格保有者で実務経験を満たしている場合は、即戦力として従事できます。多くの企業が貴重な人材として採用することでしょう。
未経験であっても資格を保有していることで採用される可能性が高いのは、20代~30代のメリットです。資格以外で有利に進める場合は、電気工事士の資格や施工管理技士の資格をあわせて取得しましょう。
40代~|電気現場の実務経験によりキャリアアップも視野に
40代以上の方で実務経験を十分に電気主任技術者であれば、キャリアアップを視野に入れての行動が十分に可能です。少なくとも即戦力として従事できます。
知識や経験を十分に積んだ作業指揮者、大型電気設備の専任主任技術者として従事できる能力が備わっているため、転職やキャリアアップを狙うことで年収が大幅に上がるでしょう。
もし、未経験の方であっても現場経験を積むことで戦力として従事できるため問題ありません。電気主任技術者は60代のシニア世代でも活躍できます。
月に数回程度の巡視点検から受配電設備の保安管理業務など非常に幅広いのが電気主任技術者の特徴です。そのため、実務経験を積むことで安定した業界で従事できるのもメリットといえます。
共通|転職やキャリアアップにより年収を上げられる
年代に関係なく共通していえるのが「実務経験を積んで転職やキャリアアップすると年収を上げられる」といった点です。
電験二種や電験一種の取得、経験を積んで独立といった方法を取ることで大幅な年収アップを狙えます。また、電験三種のみの保有でも現場経験を積んで一人前となることで年収は上がります。
転職についても、現場経験を積んだ電気主任技術者であれば、採用してくれる企業は多く存在します。それほどに電気主任技術者は現在の電気業界において重宝される存在です。
もし、今の企業の待遇に満足いかない方であれば、年収のアップ・好待遇といった条件に絞って転職することで現在よりも満足のいく働き方を実現できるでしょう。
電気主任技術者の転職は行動しながら考えるのが大切
電気主任技術者として転職する場合、転職サイトや転職エージェントを活用しての転職がおすすめです。ただし、これらは転職を決意した瞬間に活用し始めましょう。
よくある話で「会社を辞めてから考えよう」といった人がいます。心身ともに労わることはとても大切です。ただ、会社を辞めると収入が一時的に0円となり、精神的な不安が伴います。
仕事しながらの転職活動は難易度的にも高いですが、妥協してはいけない部分もあります。まずは、会社を辞める前に辞めた後のことを行動しながら考えるようにしましょう。
転職エージェントや転職サイトを活用し、辞めた後のことがある程度決まった後、これまでの疲れを十分に労わってください。
転職サイト・転職エージェントについて詳しく知りたい方は、こちらのページもおすすめです。
電気工事士・電気主任技術者に強い転職サイト3選【まずは行動すべき】
まとめ:自分にあわせた行動で電気主任技術者の実務経験を積もう!
本記事では、電気主任技術者に必要な実務経験について、電験を認定取得する方法や実務経験の積み方とあわせてご紹介しました。
電気主任技術者を目指すのであれば、電験の取得は必須です。試験合格を目指す場合は別として、認定合格を目指すのであれば実務経験を積みましょう。
実務経験を積むことで、電気主任技術者として従事する際にも年収アップといったメリットがあります。年代に問わず魅力的な点が電気主任技術者の特徴です。
未経験の場合でも採用している企業は存在するため、まずは行動しながら自分に適した方法で電気主任技術者を目指しましょう。
転職で電気主任技術者を目指すのであれば、転職サイトや転職エージェントをぜひご活用ください。