第二種電気工事士技能試験に合格するには、複線図を自力で書く力が必須になります。
ただ、最初のうちは複雑で書きにくいのも事実です。
技能試験の候補問題は全13問あるわけですが、これらすべてを暗記するくらい複線図を理解しておく必要があります。
「複線図の書き方が分からない」
「複線図自体が何か良く分からない」
「初めてでも書けるようになりたい」
今回はこういった方向けの記事になります。
結論からお話しすると、1時間真剣に取り組めば複線図を書けるようになることは可能です。あとは、反復練習を繰り返すことで技能試験の複線図はスラスラと書けるようになります。
上記を深掘りします。
補足しておくと、今回の記事は完全に初心者の方向けとなっています。初めてでもとりあえず複線図を書き切ることが可能です。
さっそく見ていきましょう。
※「複線図自体がよく分からない」といった方は、記事下部にある”複線図でよくある質問リスト”をご覧ください。ボタンをクリックすると、すぐに飛びます。
【手順付き】電気工事士技能試験の複線図の書き方
複線図の書き方を順番に解説していきます。
実際に書いていただいた方が覚えやすいので、紙を1枚用意していただき一緒に書きながら読み進めてください。
複線図を書くうえで手順は5つあります。
- 単線図どおりに器具と電源線を配置
- 接地相【白線】とコンセント・負荷を接続
- 非接地相【黒線】とコンセント・スイッチを接続
- スイッチとコンセントを接続
- 電源の色など細かな詳細を記載
初めての方でも書けるので安心してください。
今回、一緒に作成していく複線図は下記のものになります。
では、さっそく書き始めていきましょう。
▷▷参考:一般財団法人 電気技術者試験センター
単線図どおりに器具と電源線を配置
まずは、単線図どおりに器具と電源線を配置してください。
単線図を見た際に1番最初にする作業がこれです。器具と電源を配置しながら施工条件を確認するといった感じになりますね。
実際に記載すると下記のとおりです。
▷ここで記載すること
- 単線図どおりに器具と電源線を配置
- イ・ロ・ハなどの詳細
- 電源線の太さ
ここでイメージしやすいように単線2線式を用いて解説します。
まったく施工していない状況が今どういうことかというと、下記の状態です。
試験開始直後の段階は、負荷の部分には何も接続されていません。
この状態から黒線と白線・回路を完成させるための施工を行うのが技能試験です。
それでは、次の作業に移りましょう。
接地相【白線】とコンセント・負荷を接続
続いて「接地相【白線】とコンセント・スイッチの接続」をします。
今回は、コンセントがないので負荷との接続になります。
- 引っかけシーリング
- ランプレセプタクル
- 照明
この問題の負荷はこの3つです。
実際に接続すると次のようになります。
▷ここで記載すること
- 電源の白線と負荷との接続
- 電線の接続点を記載
電源の白線をつなぐことで電流の抜け道を作っています。
これと電源の黒線が負荷を通してつながることで回路が成り立っているわけです。
ちなみに、単相2線式の図で今の状態を表すと下記の状態になります。
次の作業に移っていきましょう。
非接地相【黒線】とコンセント・スイッチを接続
続いて「非接地相【黒線】とコンセント・スイッチの接続」をします。
今回は、コンセントなしなのでスイッチのみですね。
実際に接続すると、次のようになります。
▷ここでの記入項目
- 電源の黒色とスイッチの接続
- スイッチの渡り線も黒線
スイッチの渡り線も黒線なので注意してください。
ここまでの接続で「スイッチを入れると電気が使える状態の準備」ができました。
あとは、使う器具とスイッチを接続すれば回路は完成します。
最初とこの手順が複線図で1番大事なポイントになるので、ここは絶対に間違えないようにしてくださいね。
スイッチと器具を接続
完成までもう少しです。頑張りましょう。
続いて行うのは「スイッチと器具の接続」です。該当するもの同士を接続する作業になります。
- イ:スイッチと引っかけシーリング
- ロ:スイッチとランプレセプタクル
- ハ:スイッチと照明
今回は、このような組み合わせになっています。
候補問題によって接続するスイッチと器具が変わるため、そこは臨機応変に対応することが必要です。
実際に接続すると下記のとおりになります。
イ:スイッチと引っかけシーリング
これでイの回路は完成です。
同じようにロの回路も完成させていきましょう。
ロ:スイッチとランプレセプタクル
これでロの回路は完成しました。
あとは、ハの回路を完成させれば、複線図の終わりまでもうすぐです。
ハ:スイッチと照明
これでスイッチと器具との接続が完了しました。
慣れてしまえば、この作業はサクサク進むと思います。
電源の色など細かな詳細を記載
最後に、電源の色などの細かな記載をすれば完成です。
完成した複線図は下記のようになります。
※青色で記載している部分は色が入れ変わってもOKです。
リングスリーブは次の表を参考にして選んでください。
電線の太さ・本数によってリングスリーブのサイズと刻印が違ってきます。
リングスリーブのサイズ選び 一覧表
当てはまるものを選択してください。
今回の場合だと、”小”と”〇”の2種類が登場しています。
間違えて施工してしまうと欠陥になるので、ここは注意してくださいね。
候補問題No.1の複線図はこれにて完成です。
ここまで一緒に書いていただいたら、複線図を書く基礎は少し付いたと思います。あとは数をこなせばドンドン力が付いてきますよ。
次の記事を参考にしながら複線図を書いてみてください。
▷▷関連:第二種電気工事士 候補問題の複線図
【補足】複線図のよくある質問について
ここでは、複線図についてよくある質問をまとめました。
「今さら周りに聞けない」
「ここってどういうことなんだろう?」
こういった疑問をここで解決してください。
複線図を書いていく中で、知っておいた方が良い情報もまとめているので要チェックです。
よくある質問リスト
複線図ってそもそも何?
電気工事には2種類の図があります。
- 単線図
⇒配線が見やすい。施工が難しい。 - 複線図
⇒配線が見にくい。施工が簡単に。
この2種類の図面です。
単線図と複線図を同時に見比べてみましょう。
単線図
複線図
問題の初期の状態は「単線図」です。
しかし、単線図だけの状態で施工するのは難しいですよね?
結線する回路は分かっても、具体的にどうやって結線すれば良いかが分かりにくいと思います。
これを分かりやすくしたのが「複線図」です。
線が少しだけ複雑になりますが、単線図を見て書いたら問題ありません。
複線図にすることで、「何と何を結線したら良いのか」が一目瞭然になります。電気工事ではこのように2つの図面を使い分けることが多いです。
結果として、技能試験の施工を素早くこなすために「複線図」が必要となり、皆さんには複線図を書く力が求めらるわけです。
技能試験ってそもそも何を施工しているの?
そもそも技能試験は何を施工しているのか?
意外とこれを理解している人は少ないです。
というのも、与えられた単線図を淡々と施工していくためですね。
ただ、イメージってもの凄く重要なので、是非知っていただきたいです。
この図面を見てください。
これは、電気技術者試験センターに掲載されてある第二種電気工事士筆記試験の平成30年度問7の問題です。大事なのはそこではありません。
見ていただきたいのは図の方です。
この図を例に解説すると、技能試験で皆さんが接続するのは下の赤丸部分です。
これが、技能試験で皆さんが施工する部分になります。
もっと具体的に見ると、技能試験では「単相2線式」と呼ばれる結線の方式を採用しているので正確の図は下のとおりになります。
この図の負荷の部分を施行していくわけです。
ちなみに、この図には重要な情報がいくつか含まれているので覚えていただけると幸いです。
電源の白線を接続するのは何で?
電源の白線は「コンセント・負荷」に接続します。
その理由は「電気の抜け道を作る必要があるから」です。
単相2線式の図を例に見ていきます。

図の白線に関するポイントをピックアップします。
- 黒・白の部分は実際に送電してきている電線の色
- 実際の設備で白線は接地されている【接地相とも呼ばれる】
- 電流の流れは黒線側から入って白線側から抜ける
こんな感じです。
これがコンセントや負荷に電源の白線を施工する理由になります。
- コンセント
⇒黒線側が負荷を通って白線側に抜けていく - 負荷【照明やコンセントで使う日用品】
⇒スイッチ or コンセントから流れた電源側【黒線】の電流を白線を通じて抜けていく
上記のとおりです。
これが理由になります。「白線=電流の抜け道」とだけ覚えていただければOKです。
電源の黒線を接続するのは何で?
電源の黒線は「コンセント・スイッチ」に接続します。
その理由は「器具の電気を使える状態にするため」です。
単相2線式の図を例に見ていきます。

図の黒線に関するポイントをピックアップします。
- 白線は0V
⇒接地しているため - 黒線と白線の電位差=電圧
⇒黒線は接地していないため
- 電流の流れは黒線から白線
⇒黒線:入口・白線:出口
こんな感じです。
コンセントは白線も接続するので一旦置いておいて、スイッチに電源側の白線ではなく黒線を接続するのはこれが理由です。
スイッチに白線を接続すると必然的に負荷に電源の黒線が接続されることになります。つまり、スイッチの入り口まで電気が生きている状態になるので非常に危険です。
上記のとおりです。
「電気の入り口にあたる部分は黒線」と覚えていただければOKです。